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有機×官田ヒシ:生態連鎖と小学生の職能教育をリンク

有機×官田ヒシ:生態連鎖と小学生の職能教育をリンク

ヒシは日当たりが良く高温多湿の環境を好み、台南の官田と高雄の仁武が主な生産地で、官田の生産量は台湾全体の70%を占めます。台湾の主要品種である二角ヒシの成長期間は9月から12月にかけての半年です。
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ヒシはヒシ科ヒシ属の一年草の水生植物で、実は赤い元寶(中国のインゴット)のような殻と白い仁でできていて、タンパク質、不飽和脂肪酸、各種ビタミン、微量元素が豊富です。口の中でホクホクとほぐれ、栗のような香りがするため、「水中落花生」とか「水栗」の名で親しまれています。

ヒシは日当たりが良く高温多湿の環境を好み、台南の官田と高雄の仁武が主な生産地で、官田の生産量は台湾全体の70%を占めます。台湾の主要品種である二角ヒシの成長期間は9月から12月にかけての半年です。

湿地で有名な台南官田は、烏山頭ダムの澄んだ水源と嘉南平野の肥沃な土壌を有し、旧地名を官佃といい、鄭成功の時代の屯田兵による開墾で、米とヒシを植えた歴史があります。農家は『稻菱輪作』(稲とヒシのローテーション栽培)で、冬に米を植え、夏にはヒシを植えます。泥地は田植え機の使用に適していないため、直接モミを撒いてイネを育てますが、その際、鳥にモミを食べられないよう、モミを農薬に浸したことが鳥の大量死を引き起こし、その中には絶滅危惧種二級の保護鳥であるミズキジも含まれていました。

台湾に生息するミズキジの三分の二は、官田のヒシの水田に生息しており、毎年四、五月になると、ヒシの株が成長し、ミズキジの重量を支えられるようになると、優雅に高く舞い上がったミズキジがヒシの葉にとまり、ヒシ田に巣を作って繁殖します。黒い羽の尻尾がヒシの実に似ていることから、「菱角鳥」とも呼ばれます。


1998年、政府はヒシ農家へミズキジの繁殖を促すための奨励を開始し、2000年には生息地に補償金を支払うことで、官民共同のミズキジ生息保護区を制定し、2007年にはミズキジ生態教育園区となりました。

台湾の有機ヒシ栽培は、一人の青年農家によって始められ、善意が波紋のようにゆっくりと広がり、より多くの部門を巻き込みながら参入者を増やしてゆきました。この若い農家は環境の回復を夢見て、水生生物の多様性の維持や生態の連鎖を利用してミズキジを保護しました。ヒシは病虫害が発生しやすく、有機ヒシの栽培は困難を極めましたが、若い農家は、さまざまな生物学的防除方法を試み、害虫のミズメイガにはカダヤシという小魚を使ってコントロールしたり、スクミリンゴ貝と水藻はマガモを飼って食べさせました。ウキクサは、普通除草剤や石灰を使えば半日で駆除できますが、石灰で水中の微生物が全て死滅してしまったり、ミズキジの目を失明させる原因になるので、何日もかけて手作業でウキクサの除去を行ないました。この努力が人々に感動を与えたことで農業改良状の助けを得ることができ、他の農家にも影響を及ぼし農業企業組織を設立するに至りました。

有機ヒシの生産者と組織は、学校での食農教育を重視しており、エディブル・ランドスケープの校庭と合わせて、子供たちに小さい頃から多様な生態の重要性や、ミズキジ保護の価値、野生動物の生息環境保護の大切さを教えます。また、子供たちにカエルの衣装を着せて水に入り、ヒシの実の収穫過程を体験してもらうことで、強い日差しの下で水田に屈み、腰まで水に浸かりながらヒシの実の成熟度を判断し収穫する苦労をと、農家に対する感謝を学んでもらいます。

有機ヒシとミズキジ保護の成功が、産官学の協力をさらに促進させ、2015年には農業廃棄物だった年間1,000トン以上ものヒシの殻を使って「菱殼炭」を開発し、国際バイオカーボン規範に沿って様々な製品が作り出され、「官田の漆黒の金」となっています。

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